行政書士は独学で受かるのか|公式データから見る、始める前の判断材料

テキストとチェックリストを見ながら、仕事と両立する独学の計画を考える人 行政書士

この記事でわかること

「独学の合格率」という数字は公表されていません。実施団体は合格者の学習方法を調べていないためです。
合格に必要なのは300点中180点。4割近く間違えても受かります。ただし足切りが2か所あります。
申込者の2割は受験していません。独学でいちばん多くの人が脱落するのは、試験当日の前です。

※ 数値はすべて一般財団法人行政書士試験研究センターの公表資料で確認しました(2026年9月8日)

行政書士を独学で目指したいけれど、本当に受かるのか。講座に何十万円も払わずに済むなら、そうしたいですよね。

調べると、独学の合格率はどこにも公表されていないことがわかります。実施団体は、合格者がどうやって勉強したかを調べていないからです。独学の合格率も、講座利用者の合格率も出ていません。

それでも、公表されている数字から判断できることはいくつもあります。行政書士試験は働きながら受ける人の試験で、満点を取る試験でもありません。独学で詰まりやすいところも、3か所に絞られます。

まず、「行政書士の独学の合格率」は存在しない

行政書士試験研究センターが公表しているのは、受験者数、合格者数、合格率、年代別と男女別の内訳、都道府県別の結果、配点と合格基準点です。

学習方法についての項目は、ひとつもありません。独学だったのか、通信講座を使ったのか、予備校に通ったのか。集計されていないので、誰にも分かりません。

ちなみに社会保険労務士試験では、合格者の職業構成が公表されています。会社員58.4%、公務員11.7%といった具合です。行政書士試験では職業の内訳も公表されていません。比較できるのは年代と性別だけです。

「独学の合格率は10%」のような数字を見かけたら、どこから来た数字なのかを確かめてください。実施団体の資料には載っていません。

判断材料1 行政書士試験は、働きながら受ける人の試験

公表されている数字のなかで、いちばん判断に効くのが年代別のデータです。

年代受験者数合格者数合格率
10歳代以下723人66人9.13%
20歳代8,294人1,517人18.29%
30歳代9,907人1,923人19.41%
40歳代12,161人1,867人15.35%
50歳代12,330人1,445人11.72%
60歳代以上6,748人474人7.02%
合計50,163人7,292人14.54%
表1 令和7年度の年代別 受験者数・合格者数・合格率(出典:行政書士試験研究センター「最近3年間における行政書士試験の受験者・合格者の属性」。合格率は受験者数と合格者数から算出)

受験者の82.02%が30歳代以上です。人数が最も多いのは50歳代の12,330人、次いで40歳代の12,161人。学生が短期集中で取る試験ではありません。50代から定年後の仕事として目指す場合は、定年後に行政書士、50代から始めて間に合うかも参考になります。

そして合格率が最も高いのは30歳代の19.41%です。40歳代も15.35%で全体平均を上回っています。

「時間が取れないから独学は無理」は、データと合わない

仕事や家庭を抱えた人が不利なら、30代・40代の合格率は下がるはずです。実際には逆で、最も受かっているのが30代です。

年代令和7年度令和6年度令和5年度
10歳代以下9.13%10.63%8.20%
20歳代18.29%16.72%16.92%
30歳代19.41%16.72%17.84%
40歳代15.35%13.17%14.52%
50歳代11.72%10.09%11.45%
60歳代以上7.02%7.35%8.48%
表2 年代別合格率の3年推移(出典:行政書士試験研究センター「受験者・合格者の属性」より算出)

3年ともほぼ同じ形です。単年の偶然ではありません。

もちろんこれは、その年代に基礎学力や集中力があるという話ではありません。受験者の中心がその年代だという構成の問題も含まれています。ただ数字を見るかぎり、「働きながらでは受からない試験」ではありません。

受験者層についてもう少し詳しくは行政書士試験の難易度は?公式データで見る合格率・合格基準・受験者層で扱っています。

行政書士試験の中身をもう一度

科目出題数内容
行政書士の業務に関し必要な法令等46題憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法を中心とする)、民法、商法、基礎法学
行政書士の業務に関し必要な基礎知識14題一般知識、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令、情報通信・個人情報保護、文章理解
表3 試験科目と出題数(出典:行政書士試験研究センター「試験の概要」)
試験科目出題形式出題数満点1問あたり
法令等5肢択一式40問160点4点
法令等多肢選択式3問24点8点(空欄ア〜エ1つにつき2点)
法令等記述式3問60点20点
基礎知識5肢択一式14問56点4点
合計—60問300点—
表4 出題形式別の配点(出典:同センター「令和7年度行政書士試験合否判定基準」)

試験時間は午後1時から午後4時までの3時間。60問なので1問あたり3分です。記述式に時間を残すには、択一をそれより速く処理する必要があります。

判断材料2 行政書士試験は満点を取る試験ではない

独学を迷う理由の多くは「範囲が広すぎる」です。たしかに憲法、行政法、民法、商法、基礎法学、そして基礎知識まであります。

ただ、合格に必要なのは300点中180点。得点率にして60.0%です。

行政書士試験の法令等50.00%、基礎知識42.86%、試験全体60.00%という3つの合格基準を示した横棒グラフ
図1 3つは「いずれか」ではなく「いずれも」。配点の小さい基礎知識にも足切りがある(出典:行政書士試験研究センターの公表値をもとに作成)
要件必要な得点満点必要な得点率
法令等科目の得点122点以上244点50.00%
基礎知識科目の得点24点以上56点42.86%
試験全体の得点180点以上300点60.00%
表5 合格基準点(出典:行政書士試験研究センター「令和7年度行政書士試験合否判定基準」)

法令等は5割、全体で6割。4割近く間違えても合格します。全範囲を完璧にする必要はない、という設計です。

実際の合格者はもう少し上にいます。令和7年度の合格者平均得点は197点、令和6年度は198点。基準より17点ほど高いところに集まっています。180点ちょうどを狙う計画より、200点を目標にして180点で着地する計画のほうが現実に近いということです。

判断材料3 独学で詰まるのは、範囲の広さではなく3か所

表2の3つは「いずれか」ではなく「いずれも」です。ここに独学の落とし穴があります。

落とし穴1 基礎知識の6問

基礎知識は14問、56点。試験全体300点のうち2割弱しかありません。配点が小さいので後回しにされがちです。

ところが基準点は24点。1問4点なので14問中6問を正解できなければ、法令等が満点でも不合格になります。

出題は一般知識、行政書士法等の諸法令、情報通信・個人情報保護、文章理解の4分野。このうち文章理解は法律の知識と関係がなく、対策の性格が違います。独学だと「法律の勉強」に時間を取られて、ここが手つかずになりやすい。4分野が何問ずつ出ているかは行政書士の足切りで数えました。

分野内容の例
一般知識政治・経済・社会に関する知識
行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令行政書士法など
情報通信・個人情報保護個人情報保護法制など
文章理解文章の読解
表6 行政書士試験の基礎知識科目の出題分野(出典:同センター「試験の概要」)

なお基礎知識は令和6年度から現在の形になりました。それ以前は「一般知識等」という名称で範囲も違います。令和5年度以前の教材や合格体験記を読むときは、ここが変わっていることに注意してください。

落とし穴2 記述式の60点

記述式は3問しかありませんが、1問20点で合計60点。全体の20%です。

この60点をどう見積もるかで、択一に求められる精度が大きく変わります。記述式を除いた満点は240点です。見積もりの前に、正解例18問がどんな文かを行政書士の記述式で見ておくと、0点と置くかどうかの判断が変わります。

行政書士試験の記述式で0点なら択一で75.00%、30点なら62.50%が必要になることを示した棒グラフ
図2 記述式を捨てると、択一だけで4問に3問が必要になる(出典:同センターの配点表をもとに作成)
記述式の得点択一等で必要な点数240点に対する必要得点率
0点180点75.00%
10点170点70.83%
20点160点66.67%
30点150点62.50%
40点140点58.33%
60点120点50.00%
表7 行政書士試験の記述式の得点と、択一等で必要になる得点率(配点表から算出)

記述式を捨てると、択一だけで4問に3問が必要になります。逆に半分の30点を見込めれば、62.50%まで下がります。「記述は捨てて択一で稼ぐ」という戦略が成立しにくいのは、この差のためです。

落とし穴3 法令等の122点

法令等は46問で244点。ここでも122点の基準があります。基礎知識を満点の56点取っても、法令等が121点なら不合格です。

法令等基礎知識合計結果
160点20点180点不合格 基礎知識が24点未満
121点56点177点不合格 法令等が122点未満、合計も180点未満
122点56点178点不合格 合計が180点未満
124点56点180点合格
130点50点180点合格
表8 不合格になる組み合わせの例(配点と基準点から作成した例です)

3つ目の行を見てください。法令等と基礎知識の両方の基準を満たしていても、合計が180点に届かなければ不合格です。足切りを避けるだけでは足りません。

独学の教材を買う前に、無料で手に入るもの

独学を考えるとき、最初の出費は教材費です。ここで一つ、知っておくと得なことがあります。本試験の問題そのものは、実施団体が無料で公開しています。

資料内容年度
試験問題本試験の問題(PDF)令和2年度から令和7年度までの6年分
試験問題の正解年度ごとの正解各年度
合否判定基準配点と合格基準点各年度
試験結果の推移申込者数・受験者数・合格者数・合格率最近10年間
受験者・合格者の属性年代別・男女別の内訳最近3年間
都道府県別試験結果一覧47都道府県ごとの結果各年度
試験の概要受験資格・試験日・科目・手数料—
表9 行政書士試験研究センターが公開している資料(2026年9月8日時点で確認)

市販の過去問題集には解説がついていますが、問題と正解だけなら費用はかかりません。「自分に行政書士試験の文章が読めるのか」を確かめるだけなら、まず1年分を解いてみるのがいちばん早い判断材料になります。

これは教材が不要という意味ではありません。解説がなければ、なぜ間違えたのかは分かりません。ただやるかどうかを決める段階では、無料の材料で足ります。

教材を買うときに見る一点

法令は、試験を実施する日の属する年度の4月1日時点で施行されているものから出題されます。教材の対応年度がずれると、改正部分がそのまま失点になります。条文を読む本が要るかどうかは行政書士の六法・判例集は必要かに、設問文を数えた結果としてまとめました。

中古で前年度版を安く買うという選択は、ここで割に合わなくなることがあります。また基礎知識は令和6年度から現在の形になったので、それ以前の教材は範囲そのものが違います。

独学でいちばん多くの人が脱落するのは、試験の前

ここまで試験の中身を見てきましたが、独学の成否を分ける要素はもう一つあります。

年度受験申込者数受験者数欠席者数受験率
令和7年度63,845人50,163人13,682人78.57%
令和6年度59,832人47,785人12,047人79.87%
令和5年度59,460人46,991人12,469人79.03%
令和4年度60,479人47,850人12,629人79.12%
令和3年度61,869人47,870人13,999人77.37%
令和2年度54,847人41,681人13,166人75.99%
令和元年度52,386人39,821人12,565人76.01%
平成30年度50,926人39,105人11,821人76.79%
平成29年度52,214人40,449人11,765人77.47%
平成28年度53,456人41,053人12,403人76.79%
表10 受験率の推移(申込者数と受験者数から算出。出典:行政書士試験研究センター「最近10年間における行政書士試験結果の推移」)

令和7年度は63,845人が申し込みました。会場に来たのは50,163人。13,682人が受験していません。

受験手数料は10,400円です。払ったうえで来ていません。10年を通して2割前後が同じことをしています。特殊な年の話ではありません。

この人たちが全員「実力不足だから諦めた」わけではないでしょう。仕事が忙しくなった、途中で手が止まった、間に合わないと判断した。理由はさまざまです。ただ結果として残るのは、独学の最大の関門が、法律の難しさよりも11月まで続けられるかどうかだという事実です。

合格率14.54%は受験した人の中での割合です。申し込んだ人を分母にすると11.42%まで下がります。

行政書士の独学を始める前に決めておくこと

ここからは公表データを離れます。運営者のやり方です。これまで10以上の資格をほとんど独学で取ってきたなかで、効いていると感じているのは、勉強を始める前の時間の使い方です。

1 全体像を先に調べきる

どういう性格の試験か。配点はどうなっているか。何が問われて、どこで落ちるのか。ここに時間をかけます。

行政書士でいえば、この記事と難易度の記事に書いてある内容がそれにあたります。300点中180点、基礎知識は14問中6問、記述式は60点。この3つを知っているかどうかで、教材の読み方も、過去問の解き方も変わります。

調べる時間は無駄に見えます。実際には、ここを省くと「全部を均等に勉強する」ことになり、いちばん時間を食います。

2 重要なところから手をつける

配点を見れば、どこが重いかは分かります。法令等が244点で全体の8割強。そのなかで5肢択一が40問160点を占めます。

一方で基礎知識は56点しかありませんが、24点の足切りがあります。配点の重さと、落としてはいけない度合いは別物です。両方を見て順番を決めます。

3 独学に固執しない

運営者は独学中心ですが、必要だと思えば講習会にも出ますし、講座も使います。基準は、かけた時間に対してどれだけ受かるかです。

独学で始めて、途中で行き詰まったら手段を足す。最初に「独学で行く」と決めてしまうと、この調整ができなくなります。独学かどうかは、始める前に決めきる必要のないことだと考えています。

覚えるときはノートに手書きです。効率を優先しておきながら最後は手で書くというのは矛盾して見えるかもしれませんが、書いた分だけ頭に残るという実感があるので、ここだけは昔ながらのやり方を続けています。

独学で進めやすい条件、そうでない条件

ここまでの数字から整理すると、こうなります。

条件独学のしやすさ理由
11月まで続く見通しがある◎申込者の2割が受験していない。継続が最大の関門
配点と合格基準を先に把握している◎60%で受かる試験だと分かれば、勉強量の見積もりが変わる
基礎知識と記述式を後回しにしない◎足切りと配点20%。ここを外すと他が良くても届かない
最新年度の教材を用意できる○法令は試験年度の4月1日時点で施行されているものから出題される
質問できる相手がいない△独学の弱点は分からない箇所で止まること。時間を決めて切り上げる工夫が要る
学習の進み方を自分で管理できない✕独学は締切が自分にしかない。ここが苦手なら講座の日程に乗るほうが早い
表11 行政書士の独学の向き不向きを分ける条件(★公表資料ではなく、上記のデータをもとにした整理です)

最後の2つに当てはまるなら、独学にこだわる理由はありません。かけた時間に対してどれだけ受かるかで考えれば、講座を使うほうが速い場合があります。

行政書士試験の受験そのものの条件

項目内容
受験資格年齢、学歴、国籍等に関係なく、どなたでも受験できる
試験日毎年1回、11月の第2日曜日 午後1時から午後4時まで
試験地全国。住所に関係なく全国の試験場で受験できる
試験場47都道府県62試験場(令和7年度実績)
試験場所の公示毎年7月の第2週
受験手数料10,400円(返還されない)
合格発表令和7年度は令和8年1月28日に結果を公表
表12 受験の基本情報(出典:同センター「試験の概要」および「令和7年度行政書士試験実施結果の概要」)

試験地の公示が7月の第2週で、本番が11月の第2日曜日。会場が分かってから4か月しかありません。逆算すると、勉強を始めるのはそれより前になります。申込みの期間は1年のうち35日間しかありません。日程は行政書士の試験日にまとめました。

よくある質問

行政書士の独学の合格率は何%ですか?

公表されていません。実施団体は合格者の勉強方法を調べていないので、「独学の合格率は○%」という数字には出どころがありません。

独学で詰まりやすいのはどこですか?

基礎知識の足切り(14問中6問)、記述式の60点、法令等の122点の3か所です。範囲の広さそのものより、この3つの基準のどれかで落ちる形が多くなります。

働きながら独学で受かりますか?

受験者の8割は30代以上で、働きながら受ける人が中心の試験です。時間が取れないことは、独学をあきらめる理由にはなりません。

独学で行き詰まったら、どうすればいいですか?

独学にこだわらず、講義や質問だけを足す方法もあります。講座の料金と、独学に足せる支援の違いは行政書士の通信講座7社比較にまとめています。

まとめ

  • 「独学の合格率」は公表されていない。実施団体は学習方法を調べていない
  • 受験者の82.02%が30歳代以上。合格率が最も高いのは30歳代の19.41%
  • 合格に必要なのは300点中180点=60.0%。4割近く間違えても受かる
  • ただし足切りが2か所。基礎知識は14問中6問、法令等は244点中122点
  • 記述式を捨てると、択一だけで75.00%が必要になる
  • 申込者の約2割は受験していない。10年間ずっと同じ
  • 合格者の平均得点は197点で、基準より17点上

独学で受かるかどうかは、始める前には決まりません。決まっているのは、何点取れば合格するか、どこに足切りがあるか、いつ試験があるかです。そこを先に押さえてから、自分の使える時間と照らす。判断はそのあとで足ります。

行政書士試験がほかの資格とくらべてどうなのかは行政書士・宅建・社労士・司法書士の難易度を比べるにまとめました。テキストと過去問の選び方は行政書士のテキストと過去問|300点の設計から逆算してそろえるに、その教材の分量から必要な時間を見積もる方法は行政書士の勉強時間は800時間?、講座を使う場合との費用と時間の差は行政書士の通信講座は独学と何が違うのかに、科目ごとの配点は行政書士の科目別の配点にまとめました。

この記事の数値は2026年9月8日に、一般財団法人行政書士試験研究センターの公表資料で確認しました。制度、日程、手数料は変更されることがあります。出願の前には必ず同センターが公表する最新の内容をご確認ください。

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