行政書士の記述式は捨てていい?公表されている正解例から考える

行政書士の記述式答案をペンと虫眼鏡で確認する学習机のイラスト 行政書士

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択一のテキストを1周して過去問に手を付け始めたころ、記述式が気になってきますよね。3問で60点。40字で書けと言われても、何をどう書けば点になるのか見えない。捨てて択一に集中するか、練習するか、迷うところです。

調べると、記述式は捨てなくていいことがわかります。公表されている正解例を18問ぶん並べると、ほとんどが条文の言葉を40字に組んだ文だったからです。択一のために覚えている条文の見出し語で、記述式の答えは書けます。

「何点取れば合格ラインに乗るか」の計算は、行政書士は独学で受かるのか|公式データから見る、始める前の判断材料と行政書士試験の難易度は?公式データで見る合格率・合格基準・受験者層にすでにあるので、ここでは繰り返しません。要点だけ言うと、記述式を0点と置くと択一等で240点中180点、75%が必要になります。

行政書士試験の記述式の決まりは4つ。部分点の基準だけが無い

項目内容
形式40字程度で記述する問題が3問(問題44〜46)
配点1問20点、合計60点(300点満点の20%)
科目法令等から出題。過去6年はすべて行政法1問・民法2問(★この記事で数えたもの)
採点されない条件択一式の採点を終えた段階で合格基準を満たしていないと認められる場合、記述式の採点を行わないことがある。その場合は合否通知書にその旨を記載
部分点★基準は公表されていない。合否通知書に得点は載る
表1 記述式の決まり(出典:行政書士試験研究センター「試験の概要」「合否判定基準」「行政書士試験のご案内」)

4つ目が独学で読みにくいところです。択一で土台ができていないと、記述式は採点さえされない。逆に言えば、記述式は択一の上に乗る点数で、択一の代わりにはなりません。択一の段階で合格基準を満たすには、行政書士の科目別の配点|公表されていないので、過去6年を数えて出したで数えた配点のとおり、行政法と民法で取るしかありません。

部分点は、あるとも無いとも公表されていません。「合否通知書に配点、合格基準点及び得点を記載して通知」とだけ書かれていて、記述式の得点がどう付いたかの内訳は本人にも分かりません。この記事でも部分点の話は書きません。書けるのは、公表されている正解例が何かだけです。

行政書士試験の記述式、正解例18問を全部並べる

実施団体は毎年、記述式の「正解例」を公表しています。令和2年度から令和7年度までの6年分を、設問の主題と根拠をつけて並べます。設問文そのものは載せません。主題は要約、根拠の分類はこの記事のものです。

年度問主題(要約)正解例根拠
令和2年度44換地処分の無効確認訴訟本件組合を被告として、本件換地処分を対象とする無効の確認を求める訴えを提起する。(40字)行政事件訴訟法
45第三者の詐欺と取消しBが詐欺の事実を知り又は知ることができたときに限り、Aは、契約を取り消すことができる。(43字)民法96条
46背信的悪意者からの転得者背信的悪意者は、信義則上登記の欠缺を主張する正当な利益を有しない者であって、AC間の売買は有効であるから。(45字)判例(信義則)
令和3年度44行政指導の中止の求め行政指導に該当し、文部科学大臣に対し、行政指導の中止を求めることができる。(37字)行政手続法
45譲渡制限特約と債権譲渡Cが、本件代金債権の譲渡禁止特約につき、知り、又は重大過失により知らなかった場合(40字)民法466条
46工作物責任甲の占有者Bが責任を負い、Bが損害発生防止のために必要な注意をしたときは所有者Aが負う。(44字)民法717条
令和4年度44非申請型の義務付け訴訟B市を被告として重大な損害が生じるおそれがあると主張し、是正命令の義務付け訴訟を提起する。(45字)行政事件訴訟法
45無権代理人を本人が相続無権代理人を相続した本人が無権代理行為の追認を拒絶しても信義に反しないため、認められる。(44字)判例(追認拒絶と信義則)
46債権者代位による妨害排除Aは、Cに対し、Bの所有権に基づく妨害排除請求権を代位して、塀の撤去及び損害賠償を請求することができる。(44字)
Aは、Cに対しBの所有権に基づく妨害排除請求権を代位して、塀の撤去を請求することができる。(38字)
民法423条・判例
令和5年度44差止訴訟と仮の差止めY市に対して、出席停止の懲罰の差止訴訟を提起するとともに、仮の差止めを申し立てる。(41字)行政事件訴訟法
45抵当権の物上代位物上代位により、Cによる保険金の払渡し前に、Aが保険金債権を差し押さえなければならない。(44字)民法372条・304条
46請負の契約不適合責任契約不適合責任を根拠に、報酬減額請求、損害賠償請求、契約の解除を主張することができる。(43字)
請負人の担保責任を根拠に、報酬減額請求、損害賠償請求、契約の解除を主張することができる。(44字)
民法559条・562条〜
令和6年度44競願と取消訴訟の対象国を被告として、免許処分又は拒否処分のいずれかに対する取消訴訟を提起できる。(38字)行政事件訴訟法
45動産売買の先取特権Aは、動産売買の先取特権に基づき、一般債権者に優先して売買代金を確保することができる。(43字)
動産売買の先取特権に基づき、甲を競売して、一般債権者に優先して売買代金を確保する。(41字)
Bに催告し、相当期間履行がなければ解除権により契約解除し、甲の返還を求め、Aが売却する。(44字)
民法321条
46債権者代位(登記請求権)Aは、Bに対する登記請求権の保全のため、BのCに対する登記請求権を、Bに代位して行使する。(45字)民法423条の7
令和7年度44裁決固有の瑕疵と裁決取消訴訟裁決固有の瑕疵に当たることから、Y市を被告として裁決取消訴訟を提起する。(36字)行政事件訴訟法10条2項
45日常家事債務と表見代理本件契約が日常家事に関する法律行為の範囲内に属すると信じるにつき正当理由がある場合。(42字)判例(民法110条類推)
46事務管理と費用償還Aは事務管理に基づき消火活動を継続しなければならず、Bに対し有益費の償還を請求できる。(43字)民法697条・702条
表2 記述式18問の正解例(正解例は行政書士試験研究センターの公表。字数も同センターの表記。主題と根拠は★この記事の分類)

複数の正解例が公表されている問が3つあります(令和4年度問題46、令和5年度問題46、令和6年度問題45)。令和6年度問題45は3つで、先取特権に基づく回収を書いても、解除して返還を求めると書いても正解です。「この1文しか正解でない」という採点ではないことが、公表のされ方から分かります。

行政書士試験の記述式、正解例22例の字数
図1 行政書士試験の記述式、正解例22例の字数

字数は最短36字、最長45字。「40字程度」の実際の幅はこの10字です。解答欄はマス目で、句読点も字数に含みます。45字を超えた正解例は1つもありません。

行政法の6問は、6問とも「誰を被告に、どの訴訟か」

問題44の6問を並べると、答えの形が同じです。

年度被告(相手)手段根拠
令和2本件組合換地処分の無効確認訴訟行政事件訴訟法
令和3文部科学大臣行政指導の中止を求める行政手続法
令和4B市是正命令の義務付け訴訟(重大な損害のおそれ)行政事件訴訟法
令和5Y市差止訴訟+仮の差止めの申立て行政事件訴訟法
令和6国免許処分または拒否処分の取消訴訟行政事件訴訟法
令和7Y市裁決取消訴訟(裁決固有の瑕疵)行政事件訴訟法10条2項
表3 行政法6問の正解例の構造(★この記事の分解)

被告は誰か、訴訟の種類は何か、要件の言葉は何か。この3つを条文どおりに並べると、36〜45字になります。「重大な損害」「仮の差止め」は、行政事件訴訟法の条文にそのまま出てくる語です。令和7年度の「裁決固有の瑕疵」だけは条文にない言葉ですが、裁決の取消しの訴えでは処分の違法を理由にできないと定めた10条2項から導かれる考え方です。問われているのは、条文の語を正しく選べるかどうかです。択一でも、問題11〜19の9問は毎年この行政事件訴訟法を含む3つの法律から出ていて、その数え方は行政書士の行政法、直前期はどこから読むかにあります。

行政法の択一で、行政事件訴訟法の9問はすべて設問文に「規定」の語がありました(行政書士の六法・判例集は必要か|過去6年267問を、条文型と判例型に数えた)。記述式もその延長にあります。択一で行訴法の条文を読んでいる人は、記述式の材料をすでに持っています。

民法の12問は、条文が9問、判例が3問

行政書士試験の記述式18問の答えの根拠
図2 行政書士試験の記述式18問の答えの根拠

民法の12問のうち9問は、根拠が条文です。96条の詐欺、466条の譲渡制限特約、717条の工作物責任、372条と304条の物上代位、321条の先取特権、697条と702条の事務管理。正解例には「物上代位により」「動産売買の先取特権に基づき」「事務管理に基づき」と、条文の見出し語がそのまま入っています。

判例が根拠の3問も、答えの言葉は条文側です。令和2年度の背信的悪意者は「信義則上登記の欠缺を主張する正当な利益を有しない」、令和4年度の無権代理人の相続は「追認を拒絶しても信義に反しない」、令和7年度の日常家事債務は「民法110条の趣旨を類推」と設問にあって、答えは「正当理由がある場合」。判例の結論を、条文の語で言い直す形です。判決文を暗記していなくても、何条の何の話かが分かれば書けます。

民法で出た制度は、5肢択一と重なっている

12問の主題を択一の出題と照らすと、詐欺・債権譲渡・不法行為・代理・債権者代位・担保物権・請負・事務管理。民法の択一が54問中53問「民法の規定に照らし」だったのと同じ範囲です。記述式のためだけに覚える制度は、6年で1つもありません。

行政書士の記述式は、捨てるか練習するか

ここまでを踏まえると、判断はこうなります。

状況判断理由
択一の勉強が行政法・民法まで1周している練習する材料はもう持っている。正解例は条文の語の組み合わせ
択一が7割に届いていない択一を先に択一の段階で基準に届かないと記述式は採点されない
本試験まで1か月を切っている捨てない。ただし過去問6年分を読むだけ36〜45字の形と、被告・訴訟・要件の並びを見ておくだけで違う
記述式を0点と置いて計画するやめる択一等で75%が要る。記述式で20点取るほうが現実的
表4 捨てるか練習するかの分かれ目(★この記事の判断)

「捨てる」を選ぶと、択一等で240点中180点。行政書士の勉強時間は800時間?|公式に数字は無いので、教材の量から自分で出すの試算では、5肢択一で40問中33問が要ります。記述式で1問20点を取るほうが、択一で余分に5問取るより近い。配点と正解例の中身から出る計算で、意見は入っていません。

練習するなら、何を書けるようになればいいか

正解例の形から逆算すると、練習の中身は2つです。

科目書けるようになるもの例(正解例から)
行政法「〜を被告として、〜訴訟を提起する」の型。被告の選び方と訴訟の種類国を被告として、免許処分又は拒否処分のいずれかに対する取消訴訟を提起できる
民法制度の名前と要件を、条文の語で40字に収める物上代位により、Cによる保険金の払渡し前に、Aが保険金債権を差し押さえなければならない
表5 練習の中身(★正解例から逆算したこの記事の整理)

過去問6年分は実施団体のサイトで無料で読めますし、正解例もそこにあります。18問を自分で書いてみて、正解例と見比べる。それが0円でできる練習です。過去問の公表の日程は行政書士の試験日|2026年11月8日。申し込めるのは1年のうち35日間だけにあります。

行政書士の記述式の問題集を使うなら

18問では足りない、予想問題で回数を積みたい、という段階の人向けに、記述式の問題集は2冊が主なものです。どちらも多肢選択式の問題を一緒に収録しています。多肢選択式は18問中13問が判決文の穴埋めだったので、この2つは同じ本で扱うのが自然です。

本価格ページ構成(出版社の説明)
合格革命 行政書士 40字記述式・多肢選択式問題集 2026年度版1,650円292基礎編は条文・判例の穴埋め、応用編は事例形式のオリジナル問題。多肢選択式の予想問題も多数
みんなが欲しかった!行政書士の40字記述式問題集 2026年度版1,760円432過去問題を素材に「問題を見てから答えを完成させるまで」の解法を追う。過去問題と予想問題、多肢選択式も収録
表6 行政書士試験の記述式の問題集(2026年9月15日にAmazonの商品ページで確認した税込価格)

選び方は、この記事の結論と同じ線で決まります。「条文の語を40字に組む」練習を先にしたい人は、条文・判例の穴埋めが基礎編にある合格革命。過去問の解き方を手順で追いたい人は、過去問題を素材にしているみんなが欲しかった。テキストのシリーズをそろえたい場合は、行政書士のテキストと過去問|300点の設計から逆算してそろえるの並びに合わせるのが素直です。2027年版がいつ出るかと、出る順の問題集を加えた3冊の違いは、行政書士の記述式問題集、2027年版はいつ出る?にまとめました。

どちらも1冊2,000円以下です。講座の記述式添削は行政書士の通信講座は独学と何が違うのか|7社の受講料と、時間差の値段で見たとおり数万円からなので、まず問題集と過去問18問で、書けるかどうかを自分で確かめてからで間に合います。

よくある質問

行政書士の記述式は、捨ててもいいですか?

おすすめしません。記述式は3問60点あり、0点だと択一で75%の得点が必要になります。

記述式の部分点はありますか?

部分点の基準は公表されていません。

何字で書けばいいですか?

40字程度です。公表されている正解例18問は、36〜45字でした。

行政法の記述式では、何が問われますか?

過去6年の6問は、6問とも「誰を被告に、どの訴訟を起こすか」でした。

この記事でわかったこと

問い答え
記述式は捨てていいか捨てない。正解例18問はほとんどが条文の言葉で書かれていて、択一の材料で書ける
正解例は何字か36〜45字。「40字程度」の幅は10字
行政法は何が出るか6問とも「誰を被告に、どの訴訟を起こすか」。根拠は行訴法・行手法の条文
民法は何が出るか条文が根拠9問、判例が根拠3問。判例の3問も答えは条文の語
部分点は基準は公表されていない。択一で基準未満なら採点されないことがある
何から練習するか過去問18問を自分で書いて正解例と比べる(無料)。足りなければ問題集
表7 まとめ(★数字はこの記事の集計。2026年9月15日時点)

記述式が怖いのは、答えの形が見えないからでした。18問並べると、形は2つしかありません。行政法は「被告と訴訟」、民法は「制度の名前と要件」。どちらも、ほぼ条文の語でできています。

この記事で確認した資料

記述式の正解例と字数は、一般財団法人行政書士試験研究センターが公開している令和2年度から令和7年度の「試験問題の正解」によります。形式・配点・採点の決まりは同センターの「試験の概要」「令和7年度行政書士試験合否判定基準」「令和8年度行政書士試験のご案内」です。設問の主題の要約と、根拠の分類、行政法6問の分解は、この記事で行いました。

問題集の価格・ページ数・構成は2026年9月15日にAmazonの商品ページで確認しました。価格は変わります。この記事は記述式の受験経験にもとづくものではなく、公表資料を読んで整理したものです。

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